資金繰り

デフレ下でも売上高利益率を上げる ひらまつ 




2021年10月の「継続企業の前提に関する重要な不確実性ひらまつ」のコラムはこちらから

今回は、株式会社ひらまつを分析してみました。㈱ひらまつは、社長平松博利氏が1982年西麻布に「ひらまつ亭」開店したのが始まりです。今では、フランス料理及びイタリア料理の分野において「高級レストラン」業態を中心に、レストラン23店舗を東京、博多、札幌、名古屋、金沢、大阪、パリで運営しています。 海外子会社HIRAMATSU EUROPE EXPORT SARLは、パリにおいて主にひらまつグループ向けの飲食材の輸出と「レストランひらまつ パリ」の運営管理をしています。

2013年5月期までの10年間をみてみましょう。

企業力総合評価は、2004~2007年まで、鋭角的変動があり、営業効率、資本効率が原因の様です。また同期間の悪化トレンドは流動性、安全性が影響を与えているようです()。2008~2011年までの上げトレンドは営業効率、資本効率、生産効率、流動性に引っ張り上げられています()。2012~2013年の悪化は流動性、安全性の影響のようです()。

気が付かれた方もあると思いますが、どの指標を見ても、リーマン・ショックがどこかわかりません。探して見つけると、右肩上がりのトレンドの最中であり、この会社の凄さが分かります。リーマン・ショックの対応が素晴らしい会社であるとの推測が立ちます()。

営業効率(儲かるか指標)、資本効率(資本の利用度)は、2008年から成長トレンドになり、ここ数年は天井値を打っています。利益が沢山出ますから、流動性、安全性が改善トレンドになる筈です。あれ?流動性、安全性は不安定な悪化トレンドですね。どうしたのでしょうか。

生産効率(人の利用度)は長期では改善トレンドです。

資産効率(資産の利用度)は不安定ですが、ほぼ青信号領域です。

流動性(短期資金繰り指標)は赤信号領域に何度も入っています。飲食業は棚卸資産・売掛債権が少ないという業種的特質です。2013年の悪化は下で述べる自己株式取得の為に現金預金が急減です。

安全性(長期資金繰り指標)は、おおむね良好ですが、不思議なことに営業効率が天井を打ってからが不安定な下げトレンドになりました。これは2009~2013年にかけて118,656~4,113,759千円の自己株式を取得している為で、問題はありません。(2014年3月資金調達の為に自己株式を処分した。)

20092013年の企業力総合評価の悪化は、自己株式買入れに伴うもので、実質悪化ではありません。

社長は、「リーマン・ショック以降の5年間、当社グループは、大胆な構造改革に着手し、より高い付加価値を提供することに取り組んでまいりました。その渦中で東日本大震災、欧州債務危機等さまざまな荒波を乗り越え、より強固な体質に変貌してまいりました。当期におきましても順調に推移し、直近8年間にわたり増収増益を繰り返し達成することができました。」とご挨拶なさっています。

リーマン・ショックが大不況の入り口であったことを考えれば、高級レストランを展開する?ひらまつには凄まじい逆風の始まりであった筈です。

ここで?ひらまつの営業効率の下位指標を見てみましょう。

2005年2007年あたり、売上高利益率は悪くはありませんが取り立てて良い訳ではありません。2013年の売上高経常利益率は25.09%と驚くべき数字です。逆風で苦戦している様子には見えません。

以下は、リーマン・ショック後の決算で開示された経営方針です。(参照:有価証券報告書)

当社グループは、会社を表象するコーポレートマスターブランドである「Hiramatsu」の傘下に、相互に依存することのない6つのレストランブランドを保有し、複数ブランドによる店舗展開を行っております。ブランドの多様性を確保することにより、あらゆる候補地に適応し得る様々なタイプの店舗展開を可能としております。

? また、1ブランドの出店数はブランド価値を減殺させないため5~10店舗程度とし、各ブランドが高いブランド価値を維持する戦略を基本としております。そのため、ブランド数の拡充は成長に欠かせない要素であり、人材育成及び新たなブランドとの提携に注力しております。

 これまで出店を行った店舗はディナー客単価2030千円の高価格帯が中心であり、高いブランド価値を創出すると判断したブランドについては、ディフュージョンブランド(ディナー客単価9~15千円程度)の展開として出店を行ってまいりました。ディフュージョンブランドは中価格帯ブランドのひとつとして位置付けており、高価格帯で展開しているブランドについては、今後も同様にディフュージョンブランドの展開を予定しております。

ブランド価値を守る為、出店数を制限し、ブランド数を増やし、ブランド価値を確立後は中価格帯ブランドの出店を増やす展開をしています。この方法で増収を狙っています。また「相互に依存することのないブランド」の構築で強い独立性を持たせます。ブランド間に強い独立性を持たせることで、増益(高い利益率)と人材育成をすすめています。

まとめ

デフレ下で「高級レストラン」を主業態にし、「レストラン業界における顧客の消費動向は、対価に対しより信頼のおける安心感のあるレストランに集約される傾向にある。」と認識をお持ちです。安易な価格競争に身を投じない姿勢を見習わなければなりません。

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SPLENDID21NEWS第101号 【2014年4月15日発行】をA3用紙でご覧いただきたい方は下記をクリックしてください。

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