増益・減益

日本レストランシステム 売上高増加率<経常利益増加率




飲食業界一の経常利益率21.4%を誇る日本レストランシステム(以下日レス)です。SPLENDID21NEWS13号でもワタミとの対比で取り上げました。新しい決算が出て、更に成長しました。そして、2007年10月にドトールコーヒーとの経営統合を果たし、FC事業への足がかりを得ました。

日本レストランシステム分析

日レスは企業力総合評価を5期以上にわたり連続上げています。営業効率、資本効率は5年以上前から天井値を示しています。流動性、安全性は2007年決算で天井値を打ちました。

生産効率は赤信号領域ですが、営業効率が天井を打ち、人材が活かされているので問題なしです。

資産効率は赤信号領域を悪化しています。これは、積極投資からよい商品・業態が生まれ、それによって営業効率が天井を打つ→お金が入ってきて流動性が改善する→内部留保が溜まり安全性改善する、という善循環に入っており、問題がありません

経常利益増加率が2007年初めて下落し、次の成長に向けてドトールとの経営統合に動いた大林社長の経営者としての能力の高さに舌を巻きます。

皆さんの関心事は、「オーバーストア(市場に対しお店の数が多すぎるという業界用語)が常態で、成熟期末期を迎えた外食産業界にあって、日レスはなぜこんなに成長するのか」であると思います。

SPLENDID21で分析して調べていくと、どんな業界でも、企業力を着実に伸ばしていく会社は「攻めと守り」が強いことに気がつきます。「攻め」だけでも「守り」だけでもありません。

では、具体的に日レスの経営を見ていきましょう。

大林社長は、いい会社を経営学の教科書に載っているような、財務体質が良く、高い収益力が継続する会社であると考えています。そして、回りがどうであろうとその方針を貫きます。

その為、売上規模拡大を目指す会社の多い外食産業にあって、好調期の業績を頼りにわき固めをすることなく拡大路線に突き進むようなことはしません。

日本レストランシステム売上高利益率分析

上の3つのグラフをご覧下さい。

左の売上高総利益率が77.09%です。

飲食業では材料の無駄が原価率を引き上げます。そこで、材料調達の子会社を作り子会社から店への仕切り価格を1年間固定させます。そうすれば、メニューあたりの標準使用量から必要量がわかりますから実績と比較して不利な差異が出た場合は使用量の無駄をすぐに見つけられます。また、厨房をコストセンターと考え総面積の2割から3割に抑えます(業界では5割のお店もあります)。客席が広くなるのは勿論ですが、大きな冷蔵庫を置けなくなります。その為、冷蔵庫で腐らせる無駄もありません。日レスでは、社長以下アルバイトまで包丁を握れ、調理師がいません。材料が余ったり、調理に失敗すれば、惜しげもなく捨ててしまう職人の無駄を排除する為です。真ん中の売上高経常利益率の4期連続の改善は、このような1つ1つの無駄を省く工夫の連続によって実現します。

日本レストランシステム増加率分析

上の3つのグラフをご覧下さい。売上高経常利益率が4期連続上がっています。なぜならどの期も経常利益増加率>売上高増加率です。偶然ではありません。利益をあげることが成長であると考える会社はこうなります。

しかし、売上高など規模を成長の指標と考える会社はこれが逆転します。それでも「売上が上がって利益額も増えれば、経常利益増加率<売上高増加率でも成長しているのでは?」と考える方も多いと思います。しかし、売上高の増加は総資産を増加させ、増えがたい純資産の穴埋めに負債が増加するリスクがあり、また、従業員増加に伴う人材育成がおろそかになりがちです。マイナス面は無視できません。

まとめ 

日本レストランシステムは2003年東京証券取引所第2部に上場し、翌年には東証1部に鞍替えしました。しかし、アナリストや外食産業の雄たちは、日レスがノーマークであったため情報がほとんどないと騒いだそうです。氾濫する情報が価値を持つとは限らないということでしょうか。

日本レストランシステムは数字を掴み、無駄を排除する効率化を極めています。そして上がった利益を使って、材料の質を上げるなどお客さまに還元しています。それが差別化につながる善循環を起こしています。

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SPLENDID21NEWS第26号【2008年1月15日発行】をA3用紙でご覧になりたい方は下記をクリックしてください。

sp21news026日本レストランシステム


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